Column

江戸時代のトイレ

2025年4月8日 環境問題のこと

日本に水洗トイレが普及したのは

1920年頃と言われています。

では、それまでのトイレはどんなだったのでしょうか。

今回は世界一の衛生都市とも称される

江戸時代のトイレ事情を垣間見てみたいと思います。

江戸時代には庶民もトイレを使っていました。

それはいわゆる「ぼっとん便所」で

長方形の穴があいた下に

肥桶が置かれ

そこにし尿がためられるというものでした。

つまり今のような排水システムではなく

ある程度し尿を溜めてから回収する仕組みです。

そのため、臭いが充満しないよう

トイレのドアは下半分のみだったそうです。

また江戸時代には

し尿は重要な資源とされていました。

そのため溜まったし尿を回収して運搬する

下掃除人という職業がありました。

こうして汲み取られた江戸の町のし尿は

馬や舟で農家に運ばれ

農作物の堆肥として

高値で取引されていたそうです。

一方、同時代のヨーロッパのトイレは

どんなだったのでしょうか。

17世紀のヴェルサイユ宮殿に

トイレがなかったという話は有名ですが

当時のヨーロッパでは

排泄物はその辺に垂れ流すのが普通だったそうです。

おまるのようなものに排泄をして

驚くことに窓から投げ捨てていました。

そのため道路は汚物でぬかるみ

ひどい悪臭を放っていたといわれています。

華やかなヴェルサイユ宮殿での舞踏会も

実はおまる持参で

鼻が曲がるような匂いの中、行われていたそう…。

貴族たちの美しいバルーン型のドレスも

立ったまま廊下や部屋の隅で

排泄がしやすいように工夫されたものだったのです。

パリの街に汲み取り式トイレが普及し始めたのは

18世紀に入ってからのことですが

それもほんの一部に過ぎず

相変わらず街は人々の糞尿だらけだったそうです。

 

それに比べて、同時代の江戸の町には

庶民にも汲み取り式トイレが普及し

し尿もほぼ100%回収されて

肥料として売買もされていました。

 

衛生的で、し尿さえもゴミにしない

循環型社会がすでに実現していたのです。

 

こうして比べてみると

江戸時代の日本は

確かに「世界で最も美しい都市」

だったのかもしれません。

先人たちの叡智を誇らしく思うと同時に

街中に不法投棄されるゴミが、海に流れて環境を破壊している

今の日本が残念に思えてなりません…。